GHOST TAIL

JuJu:怖い話と百物語

百物語

シャカシャカ
1999年/投稿者: (zen)

シャカシャカ(又はテケテケ) このお話はわりと有名なお話ですが

何故か突然ふと思い出しましたので私が聞いた記憶の範囲内でここに記します。



それは雪の降る冬の寒い日に

ある駅で起こった事が始まりとなった恐ろしい出来事です・・

朝の始発電車を運転するAさんがいつものようにいくつかの駅を通り越して

次の駅に停車しようとした時・・

事件はおこりました・・

いつもの様にその駅で停車するはずの電車でしたが

ふと見ると前方に何かが落ちていました・・






「・・・?!」






目をこらしてよく見てみると・・






人です・・






停車する駅のすぐ下の線路で女の人が横たわっていたのです。

そこは田舎でしたから始発の電車に乗る人など滅多にいません。

ですから誰かが助けてくれるわけでもありませんでした・・

「自殺だ!」 Aさんは直感で思いました。

すぐにブレーキをかけたのですが

車輪から伝わる妙な異物感が結果を物語っていました・・

Aさんはすぐに車内の乗客に人身事故の放送を流し

慌て電車を降りて線路を見回しました・・



すると遠くの方で真っ赤な地面と血のついた車輪を発見しました。

「あそこだ・・間違いない・・」

そう思ったAさんは走ってその車輪のある車両の下に向かいました。

無残な事に、そこにはさっき線路で横たわっていた

女の人の下半身が電車と線路の間に挟まっていたのです。

あたりの白い雪が真っ赤に染まる程、ものすごい出血でした・・・



「・・やっちまった・・どうしよう・・」

Aさんも、まさか自分の運転する電車が人身事故にあうとは思ってませんでしたから

耐え難い絶望感の反面そのおびただしい出血の量に恐怖を覚えてました・・

「死んじゃったよな・・・」

そんな独り言をつぶやきながら確認の為に車輪に巻き込まれて吹き飛んだであろう

腕やら頭やらを探していたのですが、何かおかしいのです・・

普通なら「車両の反対側にちぎれた上半身がある」と考えますが・・








ないのです。








いくら探しても下半身以外の体のパーツが何処にも落ちていないのです。

誰が何処を探しても見つからず上半身だけが消えてしまったのです。

結局無残な下半身だけを残したままAさんは鉄道会社を辞職し

その事件は保留とされてしまいました・・・

あの女性は本当に自殺がしたかったのでしょうか・・・?








・・ そんな事件があってから一月後・・








鉄道会社を退職したAさんは別の会社で夜勤の仕事をしていました。

そんなある日の事です・・

未だ降り続く雪の中でAさんは 自宅へ向かう為家路につきました。

ふと周りを見渡すと そこは以前自分が人身事故を起こしてしまったあの駅でした。

「嫌なとこ通っちゃったなぁ・・・」

「はやく帰ろう・・・」

そんな事を思っていると・・






「カサ・・ガサガサ・・サ・・」






Aさんの後ろで何かが這うような音が聞えてきたのです・・





「カサカサカサカサ・・ザザ・・ザ・ザ」





「な、なんだよ・・」

「ま、、まさか」

ハッ!と振り向いたその向こうには なんと











一月前にAさんがひき殺してしまった あの女性の上半身がひじを軸にして

腕を交互に這わせながらものすごいスピードでこちらに向かってきていたのです!

















「うわぁぁぁーーー!!」
















Aさんは走りました。

無我夢中で走りました。











「シャカシャカシャカシャカシャカシャカ」











今まで耳にした事のない、妙な摩擦音が背後から徐々に近づいてきます。



「助けてくれー!」

「お、俺が悪かった!勘弁してくれー!」



夜勤の帰りでしたからあたりには誰もいません・・

Aさんはひたすらその上半身からの逃げ場所を探していました。

もうすぐ後ろにあの上半身だけの彼女は迫っています・・

「そうだ!高い所なら!」

そう思ったAさんは、近くの電信柱を見つけ必死に上り一番上まで来た時に

ふと下を見下ろしてみました・・

するとその上半身だけの彼女は、異常なまでに大きく開いた口と カッ!と見開いた目で

こちらを睨み付けながらその電信柱を中心にして その場をグルグルと回り始めたのです!

その目は明らかにAさんを怨んでいるのです・・




「ギャァァァァー!!」




翌朝、電柱の上で凍死したAさんと

雪に描かれた円の中で一月前に消えた あの女性の上半身が発見されました。

Aさんの死に顔はものすごい顔だったそうです・・・

後の検査で彼女の上半身は 5日前に亡くなっている事が判明しました。

おかしいですよね・・・

あの事故から一ヶ月弱たっているというのに・・・

鋭利なものを高速で肉体に切り付けた時や

電車などの加速のついた車輪などで一瞬にして肉体を切断された場合

生き物はしばらく出血がしないといいます・・

更にあの凍てつくような寒さの中です・・

彼女はずっと生きていたのでしょうか・・