て猫
投稿者/青瑠璃


これを書いている今日は、今まで(今年)で一番の冬日だそうです。実際、キーを打つ手が冷たくて冷たくてたまりません。今日みたいな寒い日に、毎年のように思い出す事があります。 それは私が小学校3年生のある冬の日の事です。 その日、児童会の委員だった私は目前に迫ったとある行事の準備の為 遅くまで 学校に残されました。 そして帰る頃には、時計の針はもう5時をまわっていました。もう友達はとっくに帰っているし 生徒会のメンバーに帰る方向が一緒の子はいませんでした。 あたりは真っ暗です。 暗くて怖かったのですが、しかたなく私は歩き出しました。 「寒い・・・」12月の夕方、手袋以外の防寒具を持っていなかった私には 木枯らしの吹くその寒 さは酷でした。何度も立ち止まっては、ふるえながら歩き出すことの繰り返し。「死んでしまう・・・」今となっては笑えるのですが、その時の私は本気でそう思いました。その頃の下校ルートは、学校を出てしばらく歩いたところにある かなり広い造成地の 周りの道を一周するという、15分はかかる道のりでした。その造成地をつっきって歩けば10分とかからないのですが、途中で工事が投げ出さ れてしまったらしいその場所には 当時の私の身長の2倍ほどもある土が積み上げら れてできた山がいくつもあり、大人から「危ないから絶対にはいるな」と言われていた場所でした。当然、人気もありません。普段なら怖くて寄りつかない場所ですが、寒いのと一刻も早く家につきたいという思いで、私は近道をすることにしました。造成地に張り巡らしてあるフェンスの入り口を (誰かが居て、怒られると嫌だったので) 周りを気にしながらそっと開け、中に入りました。 (そのフェンスに鍵などはついていなかったことは周知の事実だったのです) 中は思った以上に静かでした。 歩を進める度にザクザクと言う音が響きます。 「早く帰りたい・・・」 その思いからさらに歩く速度を速めた、その時でした。「ニャァ・・・・・・・・」 か細い猫の鳴き声がどこからともなく聞こえてきました。 「えっ?」 辺りを見回したのですが、暗くてよくわかりませんでした。おかしいと思いつつ、また歩きはじめたとき 「ニャァ・・・・・・・・!」 また聞こえてきました。明らかに同じ猫の声です。捨て猫だろうか。でも、もしそうだとしても、こんな所に捨てられたら 誰かに見つかるこ とも、拾われることもない。私は、その猫がかわいそうになり、寒さも忘れて猫を探しました。そして、見つけたのです。造成地の隅の方に、何やら箱のような物があるのを。これに違いない。そう思った私は、さらに近くに寄ってみました。 それは、暗くてよくわからなかったのですが、かなりボロボロの段ボール箱でした。 そしてその上には、それと同じぐらいにボロボロの毛布代わりかと思われる 薄いぬのがかけてあり、中は見えませんでした。 中からは、「ニャァ・・・・・・・・」という、相変わらずか細い鳴き声が聞こえてきました。 見つけたとき、嬉しかったのですが それと同時に「どうしよう」という思いがわき上が りました。家に連れて帰るわけにもいかない・・・また明日ここに来よう。そう思い、私は足早にその場を去りました。次の日 まだ明るい内に、えさとしてあげるつもりでいた 食べ物を持って再びその場所に行ってみました。段ボール箱はありました。中からは、相変わらずか細い鳴き声が聞こえてきます。「よかった・・・生きてた。」安心したのですが、いざ、掛かっている毛布をどけようとした時に躊躇し始めました。 開けた瞬間に飛び出して襲ってきたりはしないだろうか・・・ そうして開けるのをためらっていた時、突然強い風が吹きました。 そして、掛けてあった毛布が落ちたのです。中には猫の毛がたくさん散らばっていたのですが、猫の姿はありません。そのかわり、段ボールのそこにマジックで文字が書いてありました。それを読んだ私は、走ってその場を離れました。 そこに書いてあったのは、「ここに居た猫は処分しました○○市市役所」 走って逃げたとき、後ろからはまだ「ニャァ・・・・・・・・・・」 という鳴き声が聞こえてきました。あれから私は、すっかり猫に恐怖心を感じるようになりました。あの場所にはあれから一度も行っていません。今日も寒い日です。猫はまだ、寒さに身を震わせ、か細い声で鳴き続けているのでしょうか。

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