GHOST TAIL

JuJu:怖い話と百物語

百物語

鎌倉の悪夢
2000年/投稿者: (邪夢)

当時、私はまだ中学2年生でした。

私の通う中学校では 2年生になると必ず宿泊学習があります。

いつもはスキー合宿に行っていたのですが

毎回行っているスキー場に雪が降らず 去年から鎌倉に行くようになりました。

泊まる場所は、鎌倉高原ホテル。

私のクラスは2−2。 班分けや持ってくるお菓子の量を決めたりとはしゃぐクラス。

誰もが、鎌倉宿泊学習を楽しみにしていました。

しかしある日の放課後・・・・




私は女子バスケット部の女の子達が 奇妙な話を口にしているのを聞きました・・




「鎌倉の高原ホテルには幽霊が出る。」




女子バスケット部の女の子達にその話を詳しく聞いた所

去年高原ホテルに宿泊学習に行った3年の先輩達が

ホテルの3階の302号室で奇妙な体験をしたそうです。

話しによれば302号室の戸棚には ガラス箱に入った日本人形が置いてあったとか。

日本人形の置かれていたその戸棚は部屋に入って洗面所を通り過ぎたすぐ右側にあり

部屋に入ると否が応でも目に入ってしまうそうです。










奇妙な事件が起きたのは、次の朝のこと。










起床時間を少しオーバーして起きてきた先輩達は顔を洗うために洗面所に歩いていきました。

その時なにげなく日本人形を見た1人の先輩が立ち止まって







「何これ!?」







と大きな声を上げました。

その声に全員が日本人形の周りに集まりました。

すると・・・・・






日本人形のおかっぱの髪の毛が抜け落ち ガラス箱の外にばらまかれていました。






メンバーは口々に私はやってない

俺もやってないと言います。

そこで勇気のある先輩が みんなの反対を押し切ってガラス箱を取り上げました。

しかし、ガラス箱を開けた形跡は見つかりません。

それどころか、ガラス箱は繋ぎ目を全て接着剤で固められていて

ドライバーでも使わない限り開ける事は不可能・・・

そこで302号室に泊まったメンバーは お互いに全員の持ち物を検査しました。

しかしドライバーの代わりになる物と 接着剤を持っていた人は1人もいません。

するとメンバーのうちの1人が



「誰か夜中に入ってきたんじゃないの?」 と言いました。



その意見にメンバーは全員納得し

何もなかったかのようにばらまかれた人形の髪を綺麗に片づけ朝食を食べるために




1階の食堂へと下りていきました。

1時間位して 全員がまた部屋に戻ってきました。

今日が宿泊学習最終日。

それぞれ、自分の荷物の整理に取りかかります。

楽しくおしゃべりをしながら片づけをしていたメンバーですが

そのうちの1人がいきなり大声をあげました・・・







「なんだよびっくりするじゃんかー」

「昨日の今日で一体今度は何だよ」








メンバーは大して気にもとめず 片づけを続けました。

しかし大声を上げた先輩の一言を聞いた途端 部屋は静まり返りました。










「私、消灯時間に部屋のカギ確かに閉めたよ」









そう、消灯時間が過ぎたら念のため 部屋のカギは閉めるように、と

先生から事前に言われ、302号室のメンバーも きちんとカギをかけたのです。

消灯時間を過ぎてから、部屋を出た人は1人も居ません。


















じゃあ、あの日本人形の髪の毛をむしったのは誰?

どうして、開くはずのないガラス箱の外に?


















謎を解けぬまま、先輩達は鎌倉を後にしました・・・

この話は、2−2にあっという間に広がりました。

中には行く前から 「私行かないー!休むー!!」 と泣いている生徒さえいました。

しかし先生は完璧に無視。

あっという間に時は過ぎ とうとう鎌倉宿泊学習当日が来ました。

バスに乗る前まであの奇妙な話しに びくびくしていた生徒ですが

バスの中でカラオケが始まった途端 みんなそんなこと忘れて大はしゃぎ。

カラオケの嫌いな私は、近くのトモダチと写真を撮ったり 漫画を読んだりしていました。






その日の日程を終え 高原ホテルに着いたのはPM6:00頃。

ホテルに着いた後も、夕食や入浴など大忙しで

あの話は生徒の頭の中から完全に消えていました。

もちろん、私も・・・






PM8:00。






全てが終わり、それぞれ班ごとに別れた生徒が 決められた部屋に入っていきます。

9:00までは自由時間なので

売店でジュースや夜食を買う生徒や自宅に電話する生徒もいます。

私達はまだ部屋に入らず 他の部屋でずっとトランプをして遊んでいました。

8:45頃になって、私達は布団を敷く為 ようやく自分たちの部屋へと向かいました。

しかし遊びに夢中になっていて私達の班の班長はどの部屋に泊まるのか

先生から聞いていませんでした。

廊下で本を読んでいた先生に何号室か聞くと、先生は




「えっとねー……君達は3階の302号室だよ」 と言いました。




瞬間、メンバーは凍り付いたように動けなくなってしまいました。





3階の302号室と言えば、あの奇妙な事件があった部屋・・・





その時になって 私達はようやくあの話を思い出しました。

どうにもこうにも納得できなくてもう一度を聞き直しましたが返ってくる答えは同じ。

私達は仕方なく、部屋へと向かいました。

302号室は、さっきまでいた他の部屋と 何ら変わりはありませんでした。

それにほっとした私達は笑いながら布団を敷き始めました。

部屋が狭かった為私達メンバー12人が寝るには少々頭を使わなければなりませんでした。





「あれ?例の日本人形ないんじゃない?」





メンバーの1人が言いました。

それに気付いたメンバーからは 「なんだーじゃあ大丈夫だよね」

「よかったー」 という声が聞こえてきました。

私も正直、安心していました。

布団を敷き終え、部屋のカギを閉めて全員が布団に入りました。

しかし遊び盛りの私達は眠らず ひそひそ声で話をしたり

懐中電灯を使ってお菓子を食べたり漫画を読んだり。

中にはウォークマンを聴いている生徒も居ました。

しかし先生にすぐに見つかり私達は仕方なく眠ることにしました。






しかしようやくうとうととしてきた頃 何気なく窓の方を見ていた私はそれを見てしまいました。
















シャァッという音がして、カーテンがいきなり開きました。














「え?何?」

「A、カーテン開けたー?」

気付いた生徒達が騒ぎ出しました。

窓のすぐしたに寝ていたのはAさんとEさん。

しかし2人は口をそろえて




「私開けてないって!!」




「ホントマジ私も開けてないよー!!」 と言います。

少々うるさくなりかけたとき






今度はカーテンが閉まりました・・・






「キャー!!!!」

生徒達が一斉に叫び声をあげて部屋の隅に逃げます。

しかし私は怖くて、布団の中に潜っていました。

窓は開いていました。

では、誰かがいたずらで外から開けたのか?

いえ、そんなわけありません。

何故って、部屋にはベランダなどないからです。

しかも窓はかなり小さく隣の部屋の窓からは少なくとも5mは離れています。

外からは完全に無理なんです。

部屋のメンバーは先生に怒られることをおそれて誰も布団から出ていません。

302号室の悲鳴に気付いた他の生徒達が ドアの前に殺到しました。

Tさんがドアを開けると ドアの前に居た生徒が一斉に入ってきました。

悲鳴は一階まで聞こえたらしく、先生も来ました。

私達は口々に


「先生、やっぱこの部屋幽霊がいるってー!!」


「お願いだから部屋変えて!!」 と言いましたが

先生は早く寝なさいの一点張りでちっとも信じてくれません。

私達は無理矢理部屋に戻されました。

しかし怖くて眠ることも出来ず

私達はTさんが持っていたウォークマンの音量を最大にして

部屋の隅に固まっていました。







曲は「First Love」・・・・







のはずだったのですが・・・・







カセットに入っていたのは呻き声。

















『……苦し………たすけ……て………』















Tさんはウォークマンを投げ捨てました。

気味が悪くなった私達は先生にばれないように

部屋を出ると隣の部屋で一夜を過ごしました。




宿泊学習を終えて私達はレポートを書くことになりました。

班ごとに撮った写真が、先生から配られます。

しかし私達の班だけ、写真が届きません。

すると放課後、先生から呼び出しがありました。

きっとあの騒ぎのことで怒られるんだろうと思っていた私達ですが それははずれました。




「ちょっと気になることがあるんだけどね……」




そういって先生は、私達に写真を手渡しました。






写真には全て、白い霧のような物や人間らしきものが写っていました。






その写真は、神社で処分して貰いました。

高原ホテル、3階の302号室の悪夢。

去年に引き続き今年も起こった怪奇事件。

あの悪夢は、幻だったのでしょうか……?